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軽蔑したような冷ややかな目で妹とクニを見てから、ミチルがいう。
「三種の神器は実在するわ。もう半分しか残っていないけれど、それは確かよ」
どういう意味だろう。タツオはジョージと顔を見あわせた。ジョージが困惑した表情で質問した。
「半分ないって、どういうことなのかな」
鮨の出店に続く行列が流れだした。舟形の小皿をもった士官たちが通り過ぎていく。即座にクニがチェックした。
「おー、握りが5貫か。中トロ、コハダ、ヒラメ、ウニ、アナゴだ。さすがに東島の食堂よりは贅沢(ぜいたく)だな」
「わたし、アナゴ大好き」
ぴょんとその場で跳ねて、そういったのはカケルだった。クニを無視してミチルがいった。
「三種の神器を製作したのが、わが萬家のご先祖だったといえば、うちと女皇家のつながりがわかりやすいかな。代々、萬家は武器の開発製作をもって、女皇にお仕えしてきた。古代には神器、中世には刀と槍、戦国では鉄砲の製造と改良。500年前は世界で最多の鉄砲をつくっていた軍需企業が、わが萬家よ」
「今は五王重工に抜かれたけどな」
ぼそりと口をはさんだのはテルだった。テルの右腕では五王製の軍事用義手が鈍く光っている。ちらちとテルに目をやるとミチルはいった。
「無様な腕をつけているのね。そんなローテク義手と、わが萬家の軍事テクノロジーは比較にならない。その証拠に萬家がいなければ『須佐乃男(すさのお)』も存在しなかった」
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