第17章

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 理沙さんの言葉はとても共感できた。  年齢のことだけではなく、大切な人と一緒にいる時間がとても貴重だということも伝わった。 「じゃあ、残りの人生は悔いのないように楽しむか」  藤木さんがそう言ったのを合図にして、四人でもう一度グラスを合わせた。  藤木さんは、話題の尽きない人だった。  それからも美味しい料理を堪能しながら話に花を咲かせ、ビンゴ大会では藤木さんが一番の食事券を引き当てた。  終わりに近付いてから、デザートを食べていないことに気付いて、慌てて取りに行く。  戻ってみると、チーフの皿にも藤木さんの皿にも、ケーキやフルーツがいっぱいに載っていた。 「甘いものが大好きな中年男子」と理沙さんが笑う。 「それが夫婦円満の秘訣だろ」と藤木さんが言葉を返す。 「そう言っていつも仕事帰りに、お土産を買ってくるの。おかけでずいぶん太っちゃった」 「本当に仲が良いんですね」  本音が素直に溢れた。 「普通よ、普通。でも、普通がいちばんなのよね。健康で穏やかに暮らしている今がいちばん幸せかな」
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