第1章

2/7
1019人が本棚に入れています
本棚に追加
/557ページ
「今年のクリスマスはどうなっちゃうんだろうね」  休憩室のカーペットに、サンタクロースやトナカイの衣装を並べながら、芽衣子がため息まじりに言う。トナカイの角が取れかかって綿がはみ出しているのを、芽衣子が引っ張ったり、押し込めたりを繰り返している。  私と芽衣子は店長に頼まれて、来週のクリスマスイベントに着る衣装を、倉庫から運び出してきたところだった。  去年は芽衣子とこの衣装を準備しながら、サンタのスカートが短かすぎるとか言って、はしゃいでいたことを思い出す。 「去年も一昨年も、あんなに盛り上がったのに、今年はなんだかねー」  仕事としてのイベントは、例年通り行われる。スタッフは、サンタやトナカイの衣装を着て接客することになっている。アルバイトの仲間はノリのいい学生が多いので、楽しいイベントの一つには変わりはない。  ただ毎年クリスマスイブには、閉店したあとにみんなでパーティーを開催していたけれど、今年は計画が立っていない。 「私たちだけでやってもいいけど、やっぱり宏人がいないと盛り上がらないしね」 「かといって、二人で参加されて、イチャイチャされるのも癪に触るし」  芽衣子は、思ったことをストレートに口にした。少し言葉は悪いけれど、たぶん他のアルバイトの人たちも、似たような想いを抱えているだろう。
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!