第19章

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「チーフ?」  体を起こそうとして、母に静止される。 「誰もいないわよ。宏人くんと芽衣子ちゃんにも、帰ってもらったから」  そんなに大袈裟なことになっていたのだろうか。 「それより先生を呼ばなくちゃね。目が覚めたら教えてくださいって言われていたの」  母がナースコールを押す。  するとすぐに看護師さんと医者らしき人がやって来た。 「ああ。先生」  見覚えのある顔だった。  ということは、今私がいるのは子供の頃からお世話になっている病院だ。 「運ばれて来たのが、ちょうど僕のいるときでよかったよ」  私は昨夜、救急車でこの病院に運ばれて来たらしい。 「心臓ですか?」 「いや。たぶん膵臓かな」  心臓ではないとわかってホッとした。  この先生の呑気な口調にも、救われる。  でも膵臓がどんなものなのかはわからない。 「いつ退院できますか?」 「とりあえず今日と明日は検査をしますよ。膵臓は、ほかの臓器にも影響を及ぼしかねないから、ちゃんと調べないとね。今は薬で痛みもおさまっているように感じるけど、治ったわけじゃないんだ。どちらにしても、しばらくは食事も難しいから、焦らずゆっくり治そう」  また検査か。  そう思うとため息が出た。  でも仕方がないと自分でもわかっている。  今はお腹の痛みははとんどないけれど、薬のおかげらしい。  体もだるく、背中の痛みは続いている。  体を起こす気にもなれないのは、調子が良いとは言えないからだ。  
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