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「チーフ?」
体を起こそうとして、母に静止される。
「誰もいないわよ。宏人くんと芽衣子ちゃんにも、帰ってもらったから」
そんなに大袈裟なことになっていたのだろうか。
「それより先生を呼ばなくちゃね。目が覚めたら教えてくださいって言われていたの」
母がナースコールを押す。
するとすぐに看護師さんと医者らしき人がやって来た。
「ああ。先生」
見覚えのある顔だった。
ということは、今私がいるのは子供の頃からお世話になっている病院だ。
「運ばれて来たのが、ちょうど僕のいるときでよかったよ」
私は昨夜、救急車でこの病院に運ばれて来たらしい。
「心臓ですか?」
「いや。たぶん膵臓かな」
心臓ではないとわかってホッとした。
この先生の呑気な口調にも、救われる。
でも膵臓がどんなものなのかはわからない。
「いつ退院できますか?」
「とりあえず今日と明日は検査をしますよ。膵臓は、ほかの臓器にも影響を及ぼしかねないから、ちゃんと調べないとね。今は薬で痛みもおさまっているように感じるけど、治ったわけじゃないんだ。どちらにしても、しばらくは食事も難しいから、焦らずゆっくり治そう」
また検査か。
そう思うとため息が出た。
でも仕方がないと自分でもわかっている。
今はお腹の痛みははとんどないけれど、薬のおかげらしい。
体もだるく、背中の痛みは続いている。
体を起こす気にもなれないのは、調子が良いとは言えないからだ。
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