第19章

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「お母さん、スマホは?」 「部屋に置きっぱなしでしょ。ここへ来るとき、美月の荷物は何も持ってきてないって」 「あとで、取ってきて」 「すぐには必要ないでしょう。何かあるなら、連絡してあげるわよ」  チーフのことが気になっていた。  私の部屋の鍵を開けたのはチーフに違いない。 「ねえ宏人。チーフも来てくれたんだよね」 「ああ。俺が呼んだからな」  母は私たちのやりとりを聞こえない振りをしていた。  きっとチーフのことをよく思っていないから、話題に触れたくないのだろう。  気にせず訊いてみる。 「チーフも病院までついて来てくれたの?」 「来たよ。でも今日は、息子の入学式だろ。ちょうど今、そっちに行ってるんじゃねえの」  宏人は、ぶっきらぼうな言い方をした。  それに賛同するように、母が口を挟む。 「高城さんには息子さんがいるんでしょう。美月のことより、そっちの方が大事なのよ」  私はその言葉にひどくショックを受けた。  慶太くんのことが大事なのはわかっている。でもそんな言い方はされたくない。 「チーフに会ったの?」 「会ったわよ。でも今は、それどころじゃないのよ」  
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