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「お母さん、スマホは?」
「部屋に置きっぱなしでしょ。ここへ来るとき、美月の荷物は何も持ってきてないって」
「あとで、取ってきて」
「すぐには必要ないでしょう。何かあるなら、連絡してあげるわよ」
チーフのことが気になっていた。
私の部屋の鍵を開けたのはチーフに違いない。
「ねえ宏人。チーフも来てくれたんだよね」
「ああ。俺が呼んだからな」
母は私たちのやりとりを聞こえない振りをしていた。
きっとチーフのことをよく思っていないから、話題に触れたくないのだろう。
気にせず訊いてみる。
「チーフも病院までついて来てくれたの?」
「来たよ。でも今日は、息子の入学式だろ。ちょうど今、そっちに行ってるんじゃねえの」
宏人は、ぶっきらぼうな言い方をした。
それに賛同するように、母が口を挟む。
「高城さんには息子さんがいるんでしょう。美月のことより、そっちの方が大事なのよ」
私はその言葉にひどくショックを受けた。
慶太くんのことが大事なのはわかっている。でもそんな言い方はされたくない。
「チーフに会ったの?」
「会ったわよ。でも今は、それどころじゃないのよ」
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