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そう思っていたのに、お昼を過ぎた頃にチーフが来てくれた。
母は昼食をとるために病室にはいなかった。
宏人が帰ってからは母と言葉を交わしてはいなかった。
きっと母も昼食をとるというよりも、私と距離を取って気分転換をするために病室を出たのだろう。
さっきまでは一人にして欲しいと思っていたけれど、母がいなくなると少し痛みが増して来て、なんとなく不安になっていた。
スーツ姿で現れたチーフを見つけて安心した。
チーフも私の顔を見て優しく笑ってくれた。
「ごめんな」
それがチーフの第一声だった。
「チーフが謝らないでください」
「そばにいてやれなかったし、電話にも出なかった。ひどいヤツだよな」
「そんなことないです。それより、入学式は大丈夫でしたか?」
「うん」
チーフがそっと私の手を握ってくれた。
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