第19章

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「チーフ」 「ん?」 「待っていてくれますよね」 「待ってるって?」 「だから、私が退院するまで、待っていてくれますよね?」 「当たり前だろ。なんでそんなこと言うの?」 「だって、また迷惑かけちゃったし、旅行も行けなくなっちゃったし」 「そんなの、これからいつでも行けるだろ」 「そうですよね」 「あのさ……」 「はい」 「いいや。美月が退院したら、そのときに言うよ」 「気になるじゃないですか」  そのとき母が戻ってきた。  チーフが反射的に立ち上がる。 「わざわざ、来て下さってたんですか」  丁寧な言葉の割には、言い方が刺々しい。 「これから検査があるんです。そろそろ先生がみえますから」  すぐにでもチーフを追い出そうとする態度に気を揉んだ。 「わかりました。今日はこれで」  チーフは「また来るから」と言って、部屋を出る。 「そこまで見送りしてくるわ」と母も後を追った。
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