第19章

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 説明するのは躊躇われた。  母がチーフとの交際に反対していることをチーフは知らない。わざわざ伝える必要はない。 「その話はまた今度にしよう」 「そうやって有耶無耶にするんですか?」 「そうじゃないよ。今は美月の体のことが心配だから。元気になったら、ちゃんと話をしよう。ただ、お母さんのことは、悪く言うな」 「でも……」 「お母さんは美月のいちばんの理解者だ。美月のことをいちばん大切に思ってる」 「だったら……」  母の態度は、理解者とは思えない。  はなから、チーフとの交際を否定した。 「それに、美月を優しくて賢い子に育ててくれたのはお母さんだよ。お母さんへの親孝行は、美月が幸せに暮らすことじゃないか。そのために俺は何ができるか、きちんと考えて決めたいと思ってる」  口ではチーフに敵わない。  チーフの言っていることはもっともだし、真摯な態度だとも受け取れる。  でも、遠回りしているように思えてならない。好きだから一緒にいたいという気持ちは、もっと単純なことではないだろうか。
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