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触れられていたチーフの手が離れる。
看護師さんかと思ったら、入ってきたのは芽衣子だった。
一瞬怪訝な顔をして、チーフがいるのがわかると「うわっ」と声を上げる。
「来てたんですね」
「うん」
「お邪魔虫は、すぐに帰りますから」
「お邪魔ではあるけど、帰らなくていいよ」
チーフは芽衣子に対して、いつもそんな言い方をする。
「面会は七時までだと思ってたから、ダメかなと思ったけど、八時までだったんだね」
アルバイトが終わってから急いで来てくれたのだろう。芽衣子は車を持っていないから、電車を利用して来てくれたに違いない。
「帰りは?」
チーフも同じことを考えていたみたいだ。チーフから、芽衣子に訊ねていた。
「電車で帰りますよ」
「まっすぐ帰るなら送ってくよ」
「いやいや。チーフに送ってもらうなんてとんでもない」
「そんなに嫌か」
「二人きりになったら、美月が心配しちゃいますよ」
そう言って同意を求めるように私を見た。
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