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「ぜんぜん大丈夫だよ。それに、わざわざ来てくれてありがとう」
「昨日は生きた心地がしなかったよ。さっき宏人から元気になったって聞いて安心したけど、やっぱり顔を見に来たかったから」
そんな友人がいてくれて、私は本当に幸せ者だと思う。
「色々ごめんね」
「謝ることないよ。それより早く元気になって、バイトに戻って来てよ。美月がいないとつまらないし」
「うん」
「店長も心配してたよ。美月は、みんなから愛されてるね」
そんな言い方をするなんて、チーフの反応を伺っているみたいだ。
時計を見るとあと十分で八時になるところだった。
「電話だ」
チーフがポケットからスマートフォンを取り出して確認すると「ちょっと外行ってくる」と言って病室を出て行った。
面会時間が残り少ないのに寂しい気持ちもあるけれど、チーフがいない方が芽衣子も気を使わずに済む。
「はぁ」と芽衣子は椅子に腰を下ろした。
「なんか、チーフがそばにいると落ち着かないよ」
「そう?」
「私には冷たいじゃん。出来の悪い部下を相手にする上司みたいでさあ」
「そんなことないと思うけど」
「美月は平気なの?」
「当たり前じゃない。付き合っているんだから」
「気を使わずに、自然体でいられる?」
「チーフがいてくれたらホッとするよ」
「そっか」と芽衣子は微笑んで見せるけれど、どこか不自然な感じがした。
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