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おじぃちゃんと梓さんの絆は次元を越えていると思った。おじぃちゃんの人生…もし、その奥さんが時間をくれなかったら…どうなっていたんだろう…。
「優斗。」
おじぃちゃんが首にかけてた革紐を引っ張ると服の中から黒いビロードの小さな巾着が出てきた。なに、そのお洒落な感じ。
そして、中から…赤い珠を…出した…。
「えっ…おじぃちゃん…。それ…赤い…珠。」
「ああ。あの時、貰った水晶玉だよ。」
愛しそうに赤い珠を見つめるおじぃちゃんを見て胸が苦しくなった…。
赤い糸で繋がっていても結ばれない事もある。その場合それは来世へと引き継がれる。それが常なのに…稀にそれを許さない事があるらしい。強すぎた絆は赤い糸を真紅に光輝かす。そして必ず出会う。
「おじぃちゃん…。触ってもいい?」
「ああ。いいよ。」
差し出した両手の真ん中に赤い珠を置いてくれた。慎重に引き寄せて手の中を覗く。綺麗な赤い珠を見つめると胸が締め付けられる。こんな切ない想いを、相手を思いやる気持ちを、曇りのない綺麗な想いを…こんなの知らない…。ポタッとテーブルに水滴が落ちたのを見て自分が泣いてる事に気づいた。
「おじぃちゃん…はい…。」
赤い珠をおじぃちゃんに返した。自由になった手で涙を拭う。
「優斗…。すまんな。お前を悩ませる…。」
「おじぃちゃん。俺が自分で聞くって決めたんだ。謝らないで。」
「本当に優しい子に育ったな。ありがとう、優斗。」
おじぃちゃんは優しく微笑んだ。
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