適切な距離感。

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春休みが終わって、学校が始まった。 気が付けば俺も、大学3年目だった。 大学生活も半分が過ぎて、そろそろ真剣に先のことを考えないといけないのかなとか思うと鬱になりそう。 学期始めのオリエンテーションで配られた時間割を見ながら個人の時間割を組む。 この作業をするのは5回目。 3年生の春は、コースが分かれるおかげで現実を突き付けられている気分だった。 「はよー 一ノ瀬、もうコース決めた?」 欠伸をしながら俺の隣に腰掛けたのは、藤川智希だった。 同じ学科の友達で、わりと一緒に授業を受けることが多い。学科が一緒だと被ることが多いしな。 「んー…まぁ、何となく 俺の場合は消去法だし…」 「んじゃやっぱ環境?」 「そうだね 藤川は設計行くの?」 「一番楽しいしな!」 「俺はアイデアが出ないから、設計は挫けた 図面引いたり模型作ったりは楽しいんだけどな…」 俺と藤川は、建築学科の学生だ。 静は学科も学部も違うから、あまりこういった話はできない。 ちょっと寂しいことだけど、こればっかりは仕方ないことだ。 「藤川髪の毛金髪になってる」 「似合う?」 「似合うけど、チャラそう」 「それ褒め言葉!」 藤川はチャラそう。 すごく真面目なやつだけど。 同じ女顔のくせにかっこいいとかモテるとか腹が立つ要素しかないけど、不思議と仲がいい。 「あ、そういやさ、霧山が最近人生楽しんでますって感じに幸せそうなんだけど、何かあったの?」 「え、静? いつも通りだと思うけど…」 「まじ? バイトではすげー幸せオーラ出てたよ? 俺てっきり彼女でもできたのかと思ってた!それもちょー美人とか」 「さぁ、何も聞いてないけど…」 「一ノ瀬でも知らないなら、俺の気のせいかね?」 いや、当たってるけど。 意外と人のことよく見てるんだよな。 ちょっとした変化でも気付いてくれるって、こっちとしては嬉しかったりするんだよなぁ。 しかし、その美人かもしれない彼女、俺のことなんだよなぁ… 美人でも彼女…というか女でもないけど。 言わない方がいいよな。 「いやしかし、彼女作るとは思わなかったな それとも相当惚れてたのか…」 「え、どういうこと?」 「だって、霧山って本当に心許してる感じのやつしか側に置かないじゃん 」
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