54人が本棚に入れています
本棚に追加
あまり言い振らせることじゃないから、気付いてくれた人がそれを認めてくれると、本当に嬉しいし安心する。
気が付いてくれた人が藤川でよかったなぁ。
その日はそのまま眠った。
翌日のこと。
学校から帰って、リビングに行った。
「あんた昨日思ったけど、もう少し落ち着いて帰ってくることできないの?」
「ごめんなさーい」
「ご飯にするから、テーブル片付けて準備して」
「今日俺の当番じゃないんだけどー」
「那津はバイトになった」
「えー…まぁ、なら仕方ないか」
一ノ瀬家は曜日ごとに当番制となっている。
まぁ、二人兄弟だから当番も何も、いる奴がやるみたいになってるけどな。
弟の那津は、大学一年でバイトばっかだ。
俺も一年の時はそうだったけど、三年になった今は前よりも減らした。
いや、疲れてきちゃってさ。
「文句言わないでやってくれる女の子がよかったわ
料理作るのも一緒にやってくれそうよね」
「俺たまに作ってんじゃん…」
「一緒にやりたいのよ!」
「えー…
今度一緒に作る?」
「息子と作っても楽しくない」
「もう俺にどうしろと!」
「…性転換?」
「実の息子に持つ考えじゃねぇ!」
まぁ、恋人とやることやる時は恐らく俺が女役だけどな。
それで納得してくれないかなー…。
さすがに言えねぇな。
気楽に、言えることじゃない。
聞かれない限りは無理だ。
「肉じゃがだ」
「那津が食べたいって言ってたのよ」
「俺明日すき焼き食べたいな」
「食べれば?」
「何で!
那津のリクエストは聞くのに!」
「すき焼き高いからよ」
「…じゃあぶり大根」
「旬は終わったのよ」
否定ばっかりされる。
那津に優しすぎじゃん。
「てかぶりっていつ?
スーパーなんていつでもなんでもあるじゃん?
だから旬なんて分かんない」
「そうねぇ、スーパーはどの時期でも何でもあるから便利よね
ぶりは冬が旬なのよ
寒ぶりとか聞くでしょ?」
「あ、聞く
じゃあ今って何?」
「鰆じゃない?
え、何?
あんた料理男子目指してるの?」
「目指してないよ…
でも料理できた方がよくね?
今もそれなりにはできるけどさ」
「そうねぇ」
いつか一人暮らししたいし。
大学卒業して、二、三年後くらいかな。
金貯めて一人暮らし。
夢だなー。
家から学校が一人暮らしするほど遠いわけじゃないからできないし。
地方からきた子が一人暮らししてるのをすごく羨ましく感じる。
最初のコメントを投稿しよう!