何でもない日の想定外。

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「ごめん」 「え、何が?」 真っ赤な顔のまま、謝られた。 ふむ、わけ分からん。 「だって、気持ち悪い、だろ?」 「いや別に」 だって、嫌われてるわけでもないしな。 むしろ好かれてるわけだし。 「俺、静好きだし」 「えっ!?」 ばっ、とすごい勢いで俺の方に顔を向けてきた。 今首飛びそうなくらい勢いあった。 「ま、まじで?」 「静まだ顔真っ赤ー」 「それは放っておけ! で、その…」 「あ、うん まぁ意味はお前と同じかって言われると違うけど」 友達として、だから。 「……だよな」 あ、すげー悲しそう。 ゲームの画面に視線を戻すのではなく、俯いてしまった。 「何で俺なの?どこが好きなの? 大学でさ、可愛い子たくさんいるじゃん」 「好きになっちまったんだから、仕方ねぇだろ 何でとかどこがとか聞かれても分かんね 俺だって、友達って思っていたかった」 声が震えていた。 顔は上げないままだったから、泣いているかは分からなかった。 しかし困ったな… 親友に、しかも同性に告白されるなんて思わなかったんだ。 そんな空気、今まで出してなかったから。 それよりも困ったことがある。 「んー…どうしようってか、どうしたんだろ」 静は何も言わない。 俺が言うことを想像すると、全部悪い方向に考えちゃうんだろうなぁ… そんな酷いこと考えてるんじゃないのに。 困ったことって、どうやって断ろうとか、どうやって関係切ろうとかじゃないんだ。 どうしてか分かんないけど。 本当に分かんないし、どうしていいかも分かんないんだ。 だって、急に告白されたわけで。 「静ー こっち向いて話聞いてー」 静の傍に寄り添って、肩に触れる。 「やだ」 あ、手払われた。 「何でだよ」 「だって振られるんだろ? 俺絶対泣くよ、てかもう泣いてるから無理」 あ、やっぱ泣いてたんだ。 ぐすっ、って鼻啜ってたもんなぁ。 「違うから! どうしようってのは、そのさ…」 うん。 困ったことにさ。 「好きって言われてさ、嫌じゃなかったんだよなぁと」 不思議と嫌じゃなかったし、むしろ嬉しかった、みたいな。 「だからもう泣くなってばー 振ったりしないよ あんま言いふらせるわけじゃないし、堂々とできるわけじゃないけど、それでもいいなら付き合う?」 静の頭を撫でる。 俯いているから、顔を覗き込もうとしたら、抱き着かれた。
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