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「ラドルバッサー!」
ギスギスした不愉快な鼻声で目が覚めた。
ヒンヤリと冷たいコンクリートの感触と気分を悪くさせるのにうってつけの悪臭が戻って来、私は思わずむせ返った。
割れた鏡に私の姿が写る。その異様さに驚きつつ、ボンヤリ、昨日のことを思い返していた。
赤眼の白衣達と世界的コロシアム〈グラディウス〉のトップ選手、当に誰もが跪くユガトというキメラ。巨大な狼の体と鷲の頭をして、多くの血肉を食べてきた獰猛な生き物。
まだ私には実感が湧かなかった。
誰が囚人をキメラに変え、〈グラディウス〉のショーにしようなどというぶっ飛んだ発想を迅速に押そうと言うのか?少なくとも、私の周りにはそんなキチガイ染みたヤツ、私が殺さざるを得なかったヤツしかいなかった。あいつは仕方ない。とか言うのが、人間のずる賢く正しい姿勢なのか。私も人間のずる賢い一面を備えているだけなのだと思うと何とも物悲しい。
「ラドルバッサー!!」
鉄格子越しに目の前のドーベルマンとウサギのキメラ、レバスターが私に語りかけて来ていた。
レバスターも昨日、キメラに変えられた囚人だ。彼の目には雄の赤いたてがみを立てたライオンの体と深紅の色をした蛇の尾をした醜悪な生き物が映っていた。
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