第1章

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私はチェミの喉元に付いた蛆虫を取り除いていった。気持ちの良い作業ではなかったが、チェミが少しは楽になるのなら、動作もないことだ。そもそも、監獄ではすることが無かった。 チェミは最初、私を警戒した。だが、私が自分で言うのも何だが人畜無害で手荒な真似はしないかつては人間だったものだと悟った瞬間から、必要以上に頼って来るようになった。 朝はパンを半分ぐらいつつく。夜はヒンヤリとしたスープを3分の1舐める。 私は頭の中で色々計画を立ててみた。 回復したチェミに親友のドルスン宛てに《テレビでやっている〈グラディウス〉は囚人をキメラ化させて闘い合わせているものだ。そんなことやめさせるべきである。無実の罪に問われている私のためにも》と書いた手紙を送るのが一番賢明な方法のような気がした。 幸い大きなライオンの手は器用に文字を書くことが出来、ユガトが再び現れた時、手帳を強請ると許可された。ただ条件を突き付けられた。 『3試合連続勝利する』 再会したユガトは灰色の髪に古めかしいロジカルな雰囲気の服を着た人間だった。どうやら、キメラと人間の間を自由に行き来できるようだ。キメラのユガトと人間のユガトには大きな特徴がある。鼻の上の辺りに何針も縫ったような痛々しい痕があるのだ。
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