第1章

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その夜も俺は、工房で作業を続けていた。 逃げるように縋るように、そんなことをしていても、なんの意味もないと知りながら。 ピタリと、作業をする手が止まる。 俺は、一体何をやっているんだろうか。 これで飛べたからって、一体何になるというのだろうか。 就職もせず、研究もせず、一人部屋に籠って飛行機を作り続けている自分を、もう肯定することができなくなっていた。 それでも、他に何をやったらいいのかも分からなくて。 ただ、飛行機に触れている時間はなにもかも忘れられたから。 俺は未だ、この日常とは隔離された部屋で、ずっと飛行機を作り続けている。 そして、そんな俺の苦悩を知ってか知らずか、飛行機の制作は着々と進み、気が付けば過去最高の出来栄えとなる、飛行機の完成を目前としていた。
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