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「先輩、やっぱごっついっすねー!」
一週間後、無事飛行機は完成した。
そして、その初フライトを行うからという理由で、俺は数少ない部員をかき集め、学校近くの河原まで来ていた。
「てか、そんなことやってて大丈夫なんですか?」
「まぁ、院生だからな」
「マジすか。うわー、超羨ましいわ」
他の部員には、俺の現状についての多くは語っていなかった。
語ったところで、もう俺にもコンテストにも興味がなくなった、弱小で廃部寸前のサークルに所属していることを憂いも嘆くこともせず、ただ時間を浪費するだけに遣っている奴らがどうこう思うことはないだろうが。
「……」
集まった部員も、俺を含めて四人。
登録してある部員は10人を超えていたはずなのに、この有り様だ。
香西は、姿を表さなかった。
少しだけ期待していたのだが、当然と言えば、当然なのだろう。
「でも、これならちょっと飛べそうですよね」
部員の一人が、俺の機体を物珍しそうに眺めて言う。
「こんなのがもっといっぱいあったら、ウチももっと活気づいたかもしれないですけどね」
「いやいや、こんなの作れないから。面倒だし」
別の部員が、半笑いのまま力なく首を振る。
奴らの言葉を聞かないようにして、俺は機体に乗り込んだ。
「おっ、飛ぶぞ」
一人がそう言うと、流石に部員ということもあってか、三人とも俺の機体に目を向けた。
力いっぱい足に力を入れ、ペダルを回す。
プロペラが回り、地面から足が離れ、そして。
俺は、大空に一歩踏み出した。
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