冷たい雨の日

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「待ってても俺は来ないよ。もう二度と……綾と会うつもりないから」 電話口からハッキリと聞こえた冷たい声。 拒絶された言葉を覆すには何て答えるのが正解なの? ──分からない。 だから必死で答えを探した。 大好きな人にこれ以上拒絶されないように、また会ってもらえるように。 泣きそうになるのを堪え、というより心が苦しくなって少し泣いたかもしれない。 だって大好きな人に拒絶されるのが一番辛いから。 「でも私は待ってるから。来るまで……横浜駅のいつもの場所で待ってる」 「どんなに待ってても来ないよ。俺は絶対来ないから」 冷たい言葉は変わらない。私の期待した返事じゃなかった。彼は頑なに拒絶の言葉を繰り返す。 あぁ、もうダメなんだ。 この時に悟った。 私の言葉はもう── 届かないんだということを。 「じゃあ、元気でね」 最後の言葉と同時に電話は切れた。 ツーツー、と切れた音だけ虚しく響いた。 苦しいよ。 どうしたらよかったの? 思わずその場で泣き崩れそうになった。けれども、人通りの多い横浜駅。そんな場所で泣き崩れる訳にはいかない。 私は足にグッと力を込めた。自分に「泣いちゃダメッ」と言い聞かせた。
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