冷たい雨の日

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
彼は来ない。 分かってる。 でもわずかな希望も捨てたくなかった。 もしかしたら── そんな期待が少しだけあった。だから私は宣言通り、駅で待つことにした。 今日で横浜を発つから一目彼に会いたい。 その想いが強かった。別れてからも彼への想いはなかなか消えなかった。 いっそのこと、こんな好きな気持ちなんて消えればいいのに。 そんな事を思って彼を待つこと数時間。何度か彼に似た人を見てドキッとした。けれども、彼が現れることはなかった。 「もう来ることはないかな……」 腕時計を確認すると、帰りの新幹線まで時間が迫ってる。これが学生時代最後の横浜かと思うと胸が苦しい。 焦燥感に包まれながら、私は改札口を通り横浜駅を後にした。 その日は天気予報がはずれて少し肌寒い雨の日だった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!