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彼は来ない。
分かってる。
でもわずかな希望も捨てたくなかった。
もしかしたら──
そんな期待が少しだけあった。だから私は宣言通り、駅で待つことにした。
今日で横浜を発つから一目彼に会いたい。
その想いが強かった。別れてからも彼への想いはなかなか消えなかった。
いっそのこと、こんな好きな気持ちなんて消えればいいのに。
そんな事を思って彼を待つこと数時間。何度か彼に似た人を見てドキッとした。けれども、彼が現れることはなかった。
「もう来ることはないかな……」
腕時計を確認すると、帰りの新幹線まで時間が迫ってる。これが学生時代最後の横浜かと思うと胸が苦しい。
焦燥感に包まれながら、私は改札口を通り横浜駅を後にした。
その日は天気予報がはずれて少し肌寒い雨の日だった。
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