天使祝詞の降る夜に

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 そう、あの時もエリカは、この教会でアヴェ・マリアを歌っていた。  その声があまりにも綺麗で、純粋で。  だから俺から、声をかけたんだ。  何って声をかけたのかは、もう覚えていない。 だけど、本物の天使のように美しく笑ったエリカが何と答えたのかは覚えている。 『歌うことが、好きなんです』 「エリカッ!!」  駆け寄って、抱きしめる。  今まで散々酷いことをしてきたのに、今日だってどれだけ傷つけたか分からないのに、たったそれだけのことでエリカは幸せそうに笑う。 「覚えていてくれたんだね、初めて出会った時のこと」 「ゴメン…、俺っ……っ!!  今更謝ったって、許されないことだけど、でも……っ!!」
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