天使祝詞の降る夜に

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 でも、睡魔は一向にやってこなかった。  代わりに何とも言えない不安が、ジワジワと胸にせり上がってくる。  ……エリカが俺に何も言わずにこんな勝手な行動をしたことが、今までに一度でもあっただろうか?  エリカは大人しい性格の女だ。  俺との付き合いは、エリカからの告白で始まった。  流れで同居を始めてから、俺はエリカを便利に使って生活をしてきた。  エリカからコクってきて、俺が受けた。  だからその扱いは当然だと思っていたし、エリカもそんな生活に文句の1つも言わずに従ってきた。  ……そこでふと、思った。  本当に、文句は1つもなかったのだろうかと。 『えっ……  今日は、一緒にいてくれるって……』  もうおぼろげに霞んでしまった、今朝の会話を思い出す。  今朝急にダチに誘われて、予定もなかったし、カラオケに行くことになったとエリカに告げた時の会話を。
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