天使祝詞の降る夜に

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 でも、どこへ行けばいいのかなんて、心当たりの1つもなかった。  思えば俺は、普段のエリカがどんな店に行っているのか全然知らない。  好きな食べ物も、好きな色も、1つも知らなかった。  誕生日はかろうじて記憶に引っかかってはいるけれど、祝ってやったことなんて一度もない。  対してエリカは、いつも俺の好きなメシを用意して、俺の帰りを待っていてくれた。  誕生日なんかはケーキを用意して、毎年俺が欲しがっていたものをプレゼントに用意してくれていた。 『……ねぇ、リュウキ。  私達の関係って、何?』  ……本当に、何なんだろうな、俺達って。  町を適当にうろついていたって、エリカを見つけることはできなかった。  ただむやみに時間が過ぎて、夜は勝手に更けていく。  ……そもそも、何で俺はこんなに必死にエリカのことを探しているんだろう?
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