天使祝詞の降る夜に

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 エリカからの無償の好意で保たれてきた一方的な関係だった。  ならばエリカからの気持ちが消えた時点で途絶えてしまってもいいはずなのに、何で俺はこの関係をまだ維持しようとあがいているんだろう。 「……ずっと、待ってるから」  エリカが叫んだ悲痛な言葉が、キリキリと胸をえぐるようによみがえる。  その声がリフレインするたびに、止まりそうになる俺の足が動きを早くする。  ……エリカはきっと、本当に、ずっと待ってるんだ  大人しい性格だけれど、大胆な行動ができない人間じゃない。  俺のワガママをすべて受け入れてくれていたけれど、決して意志が弱い人間じゃない。  エリカが『待つ』と言った。  ならば、俺が迎えに行くまで、その場所からは梃子でも動かないはずだ。
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