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「ずっと待ってるから」
制限時間1分。
その間にこの一言さえ言えば、
あとは好きにしていいとの事。
恋人同士のシチュエーションでも、
ファンタジーの世界でお姫様が正義のヒーローに向けた言葉でも、なんでもいい。
なんでもいい。が、一番困る。
本当に困る。
どうしようもなく困る。
「そう?プロの役者だったら、
自由にやって下さい。って一番燃える課題だと思うけど?」
綾は、エチュードや即興劇にすごく強いと思う。
アドリブがうまくて、役を壊さない程度にふざける事ができる。
それでいて、決められた演技も完璧にこなす。
だからこそ、今プロとして活動してる、、、
私とは、違う、、、
って、落ち込んでてもしょうがない!!!
「やっぱりさ、ありきたりになっちゃうけど、、、恋人同士の別れのシチュエーションが一番分かりやすいし、うまくできるかなって思うんだけど、、、」
「あんた、恋人と離れ離れになるなんて状況になった事あるの?」
「え?いや、、、ない、、です。」
私の提案に、
綾からバッサリとダメ出しが入る。
「それじゃあリアリティーがないじゃない!
嘘の芝居だなって、審査員にバレるよ!!」
「えー!!!でもでも!実際に体験した事がない事でもやってみせるのが役者でしょー」
「だけど!シチュエーションが決められてもいないのに、わざわざ体験してない状況にしなくたっていいじゃない!
せっかく自由なんだから!もっとこう、自分の身に近い事やりなさいよ!!」
「そりゃそうだけど、身に近い事で私が待ってるものなんて、、、」
仕事?名声?お金?
ハッ、、、
、、、、クソったれが。
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