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「行くよ風太」
仕方なしに振り返る。全てを説明するのは難儀だ。今はあそこまで連れて行くのが賢明に思えた。
「ああ」
それを察したか風太も降り立ち、後に続いた。
エレベターで一階まで辿り着くと本部ロビーが広がる。相変わらずの賑わいぶりだ。改めて規模の大きさ、その勢力に驚かされる。信者を示す、白い衣服を纏った人々が辺りを行き交っている。私服を着ているのは入団希望の新参者だろう。戸惑いと畏敬の念を胸に受け付け窓口に並んでいる。
本部中央部にある大広間では教義の真っ最中らしい。重厚なパイプオルガンの音色と、厳かな声が響いている。
「凄いなー。宗教が儲かるのは知ってたけど、よもやここまでとは」
それに感化されたか、風太はキョロキョロと辺りに置かれた調度品、壁際に吊るされた団旗に視線を向けている。
「本田様、お話は伺っています。お時間までは応接室の方にてお待ち下さい」
「そうか今日はその日だったね」
そんな風太を他所に慎治は一人の信者と話し込む。深く被ったフードの隙間から覗くのは二十代程の若者の表情。若いが広報を担当する幹部だ。一見すると誰もが同じ格好で見分けがつかないが、こうして覗き込むとそれぞれが個々の表情をしている。信者といえど人間、それを如実に物語っている。また教団の衣装にも違いはある。その胸元に掲げられた前垂れ、それの有り無しと、色の違いで階級を表しているのだ。
「では本田様こちらに」
「忙しいところすまないね」
応接室があるエリアは三階にある。広報担当が歩みだし、それに慎治達も続く。
教義の間は上階へのエレベターの使用は原則禁止だ。大広間は一階と二階を貫く吹き抜け構造となっており、教義の為だけに使用するからだ。ロビーの左右には、赤絨毯の張り巡らされた大階段が設置されている。それを使用するのが通例だ。
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