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ゆっくりと辺りを見つめる__
放課後の教室内、他に誰の姿もない。整然と置かれた机と椅子。窓から射し込む夕陽が全てを赤に染め抜いていた。
静かに視線を落とした。握った拳は今でも硬直したままだ。その拳が真っ赤に染まっているのはなにも夕陽のせいだけじゃない。
頬にこびりつく痛み、口内が切り裂けて唾を飲む毎に血の味が喉に染み込む。
「てめぇ、なんでこんなこと」
後方から響く低い口調。酷く不機嫌で今にも爆発しそうな言い回し。
「これで良かったんだよ」
男が言った。後悔しないといえば嘘になる。別の解決法があったかも知れない。だけど今はこれで良かったと、自分に言い聞かせていた。
「ふざけんな、なにがこれで良かっただ! これは俺の問題だ。俺がケジメつけなきゃダメなんだ!」
辺りに爆発する激しい負の感情。
ゆっくりと振り返る視線の先、一人の少年が立ち尽くしている。
「最後の最後まで迷惑なんだよ! どうせ俺は日のあたる場所じゃ生きて行けない、そんなこと最初から分かっていたんだ!」
その頬がうっすらと腫れ上がり、口角から血が滴っている。倒れた拍子に机と椅子が倒れて無残に散乱していた。
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