第1章

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その日はテストだった。 朝から病弱な弟の調子が悪くて、共働きの両親に僕が病院に連れていくと申し出た。 学校に遅れると電話を入れ、弟を背負って信号待ちをしていた時だった。 車の急ブレーキ音。 視線を向ければ前転で転がってくる女の子。 目を瞠っていると、彼女は3回転して僕の足にぶつかって止まった。 その衝撃で彼女のポケットからスマホが落ちる。 「いったぁ……」 額を押さえて、次の瞬間はっとしたように立ち上がって服に付いた汚れを払い、 「ごめんなさいっ」 と頭を下げて走っていった。 僕は背負った弟に気を付けながらスマホを拾い、ふっと笑いをこぼした。 「すごい早業だったな」
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