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ワンピースを買ったのは
ただあなたに見てもらいたくて
携帯の中に映るあなたの
笑ってる写真を見ると
視界がぼやけるの。
このままあたしの脳裏からも
涙と一緒にあなたの記憶も
顔も声もぬくもりも
溢れ出して流れていけばいいのに
そんなこと微塵もおもったことなかった。
何度も想って
何度も会いたいって思って
何度もあなたの名前を呼んで
何度も後悔してた
いくら酷いことされたって
裏切られたって
君を嫌いになれなかった
最近のあたしは仕事に追われて
ちゃんとあなたのことを考えられなかった
毎朝のミーティングに
数々のプレゼン資料
部下の提出書類のチェックに
上司の接待も
お局の嫌がらせも
今となってはどうでも良かった。
あなたと過ごした時間に比べたら
なんも価値のない事だった。
「ランチ行ってきまーす」
12:00あたしは
あなたとよく来たおしゃれなカフェで
ランチをするのが日課だった
「いらっしゃいませー」
店内は昼時もあって込み合ってた
「お客様、店内は大変こみあっていまして
カウンター席でもよろしいですか?」
私は疲れきった体を引きずるように
カウンター席に向かった
「じゃあランチのaの玉ねぎと
胡椒抜いてください、
飲み物はハイビスカスティーで」
マニュアル通りの店員が
「ホットになさいますか?
アイスになさいますか?」
「ア…」私の声をかき消す様に
「アイスで氷は多めに入れてあげて?
この人常温でも火傷するアホだから」
え…
「かしこまりました」
店員の笑いながら返事をした
懐かしいあなたの声だった
涙が溢れて
なんでいるの?
なんでスーツきてるの?
なんでここにランチに来たの?
聞きたいことは山ほどあった
あなたは笑いながら
「嫌いだなんて次言ったら容赦しないからな?」
あたしは「大好きだから言えない!
黒髪とか似合わなすぎ」
私は泣き笑いながら言った
「でも…」
いいかけた口を耳元につけてきて
小声で話すあなたは悪魔だと思った。
「ワンピース凄く似合ってて可愛いよ」
ワンピースを買ったのは
あなたに見て欲しかったなんて
口に出しても言えない
いや、言ってやらない絶対に。
そう思った瞬間
私は雲が晴れたように
迷いもない笑顔で笑っていた。
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