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 派手なシンバルの音とともに、合奏は再開される。しょうもないチープな音楽。それを構成する一員でありながら、瑞姫はこの部活のレベルの低さにうんざりしている。  大して上手くもないくせに、無駄に身体を揺らすクラリネット。  音を盛大に外して鳴り響くホルン。  リズム隊でありながら裏拍を意識できない低音。  ――安っぽくて自己満足。瑞姫はそんなお遊びの部活の一員だ。   だがしかし、瑞姫が本当に嫌悪するのはそんなものではない。 「ちょっと、そこ止めて」  二十六小節目で指揮者の制止が入った。  瑞姫はシンバルの直後でわかっていたが、どうにも和音部隊のハーモニーが噛み合わない。おそらくトロンボーンかユーフォニアム。高音が浮わついている。 「トロンボーン、ユーフォ。音ちょっとずれてるよ。ちゃんとチューナーで確認した?」  チューナー――音程を測定する機械でもって、その場で確認させる。そんなことになんの意味があろうか。
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