第1章

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ジョーカーは何を言ってるのだろう。見る限り扉らしき物はない。まして、増えてるとは。 煙草に火をつけカチンとジッポを鳴らすとカウンターに置いた。煙草の煙とジッポのオイルの匂いが、薄暗い店内を照らす柔らかいオレンジのスポットライトに吸い込まれるように消えていく。 まるで無言の会話をしているようなマスターとジョーカー。 帰り際、「マスター、開けるなよ。また来るよ。」 とジョーカーが言った。 マスターは厨房で作業しながら、目の前の小さな扉に気づいた。 「これも…扉だ。」 棚に付いている幾つもの扉は調味料や小物が入っている。 手を伸ばして扉を開けようとした。が、手を止めた。扉の前で伸ばした手を握る…。恐る恐る取っ手に手をかけ、扉を開けた。 キィィィ…とゆっくり開けて中を見る。調味料が入っている。 「はぁ~。何をしてるんだよ…。」 パタンと扉を閉めた。
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