第1章

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 ただ勿論、普段の授業で実習がある訳ではない。様々な切り口の理論は興味深く、授業自体はとても面白かった。  短大で「子ども大好き!」「子どもカワイイ!」とキャピキャピ騒ぎ、『子ども』と一括りにして人間性そっちのけで非現実的な保育士の夢を語る同級生達を、多分、私はバカにしていたと思う。  彼らが『実践的じゃない』と言い訳のように繰り返し、テスト前に苦戦しているのを眺める私の目が冷ややかだった自覚はあった。  ただ、私が試験勉強で苦戦しなかった訳では全くなく、誰より熱心に授業を聞いていた私の成績はいつも散々だった。  周りの『今時の女の子達』をバカにしつつ、自分が彼女達より更にバカであることを自覚していた私の自尊心は歪みに歪んで育っていった。  しかしそんなことは取り立てて言う必要などないことだ。  私のひねくれ根性は、そんなサクサク美味しい浅漬け程度の仕上がりではない。  大体、私が幼児教育を面白いと思えたのは理論好きだったのが唯一の原因でないと自分でもよく判っていた。  私は、自分の性格の悪さの原因を親に擦り付けるのに有利な理論があれこれ説明されているのが、小気味良かったのだ。  我ながら、バカで性格悪いって最悪だ。
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