第1章

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 自分で吸うようになってからは、私が喫茶店などで堂々と吸うことについて咎める母を、鼻で嗤ってあしらったこともある。  タバコを吸うのが悪いと思ってるなら止めれば良い。吸いたいなら吸えば良い。  コソコソする意味が判らない、と、私は無駄にいきがっていた。  遅くきた反抗期だったのかもしれない。  確かに、思春期は特別反抗らしい反抗をしなかった。  母とはもともと、反抗するだけの親密な関係を築けていなかったのだ。  母が私の生活に関わり育児をし始めたのは、私が小学校に上がろうかという頃だ。  乳幼児期に私を育てたのは、祖母と叔母達だった。  実家を出てなかなか戻りたがらない夫(私にとっての父)を実家に引き戻す目的のために、舅姑(祖父母)に娘(私)を人質のように捕られたと、母は事ある毎に私に語ってきた。  しかし、本当に手放したくないと思えばそうできない筈はなかろうと、その当時から私の態度は冷ややかだった。  ただそれとは別に、途中から参入してきた人間が突然親という立場で私を受け入れるなど難しいだろうことは、やはり当時から、判っていた。  好き嫌いが激しく食べられる物は極僅か、そのせいでか背も低く、頭も悪いし運動神経もない、プライドだけは高いが自己を主張できるスキルはないという私の出来なさ具合は既に出来上がっていたから。
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