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B 「こんなのでごめん」
そう言ってクラスの仲間は胸ポケットに小さな花を挿すと、卒業証書と書かれたそれを差し出した。
驚いた表情から、涙が溢れ、頬を伝う。
A 「ありがとう…」
小さな花が優しく香る中、彼女が卒業証書を先刻執り行われた式の様に受け取ると、クラス中から拍手がおこった。
用意してくれていた筒に丁寧に丸めて入れると、涙が溢れて止まらなかった。
B 「これから中庭で集合写真撮るんだ」
A 「うん」
B 「行こうよ」
A 「……」
一人、また一人と出ていく教室。黒板の前で立ち尽くす彼女に、仲間達が振り向いた。
B 「一緒に卒業しようよ」
その言葉に、彼女はゆっくり歩き出した。教室の扉の前で立ち止まり、廊下を見れば、クラスの皆が待っている。
廊下から見える中庭には、八分咲きの桜。
A 「ありがとう…大好き…みんな、大好き」
廊下にカランと音を立てて筒が落ちた。
B 「……卒業おめでとう」
落ちた筒を拾い上げ、中庭に向かう。
いつも朝は皆を出迎え、夕方は皆を見送り、テストの勉強に付き合ってくれた彼女。
卒業アルバムにも、卒業写真にも彼女はいない。
それでも彼女は、クラスメイトだった。
ちょっと不思議な、僕らのクラスメイト。
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