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「今は――何にも要らない」
しっとりと体中汗ばむほどなのに
妙な寒気に唇が震える。
心も身体も
コントロールを失って
幻想の中を泳ぐようだ。
「影が怖い」
「ただの影だ」
「それでも怖いの!」
壁に延びる黒い影が恐ろしく
僕は征司にしがみついた。
「おまえ、子供みたいに……」
撥ねつけようとしたその手が
「おい……」
僕の泣き顔を見て行き場をなくす。
拳を握り
しばらく戸惑った挙句。
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