ようこそ、胃潰瘍部へ！

1. 最初に疑われる人は大体犯人じゃない

　二週間前に三月の一大イベントである卒業式を終えた梅ヶ丘高校は春休みに入っていた。生徒たちは授業から解放されてつかの間の自由を与えられているが、部活に所属している者はそうではなかった。文化部、運動部と関係なく彼らはやはり毎日のように学校に通ってきている。
　校舎には吹奏楽部の演奏や演劇部の発声が響き、グランドでは野球部とサッカー部の掛け声が木霊する。最上級生が去り、その身が一層引き締まったのだろう。どの部活も気合と気迫が感じられる。
　今、その中でも特に張り切っているのは、初の予選大会三回戦突破を狙う野球部でもなければ、来月で創部10年になる合唱部でもなく、「依頼を鮮やかに解決してみせましょう」、略して「胃潰瘍部」の面々だろう。