11人が本棚に入れています
本棚に追加
よく晴れた日の、午後。オフィス街に高くそびえたつ、CBSソニーのビルには、たくさんの少年少女達が、次々と入って行った。
彼らの目的は、新人歌手のオーディションである。楽譜を見て歌詞をチェックする者、ギターのチューニングを行う者・…
会議室前の空気は、緊張と自信が、入り混じっていた。
木製のドアを隔てた会議室では、社員達が、受験者たちの、エントリーシートと、にらめっこをしている。
(1番の方、お入り下さい。)
失礼します、という挨拶と共に、1番目の少年が入室した。
背は高く、ギターを抱えた手には、傷1つなく、顔はかなりの美男子だ。
(それでは、自己紹介をお願いします。)
少年は、にこりと微笑んだ。
(青山学院高等部2年、尾崎豊です。)
(尾崎…!?)
彼が座っている椅子から、少し離れた席に座っていた、プロデューサーの須藤晃や、他の社員は、開いた口がふさがらなかった。この尾崎豊という少年は、昨日、オーディションを受ける予定だったのだ。
だが、約束の時間になっても姿を見せないので、社員達も、あきらめていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!