少年 尾崎豊

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よく晴れた日の、午後。オフィス街に高くそびえたつ、CBSソニーのビルには、たくさんの少年少女達が、次々と入って行った。 彼らの目的は、新人歌手のオーディションである。楽譜を見て歌詞をチェックする者、ギターのチューニングを行う者・… 会議室前の空気は、緊張と自信が、入り混じっていた。 木製のドアを隔てた会議室では、社員達が、受験者たちの、エントリーシートと、にらめっこをしている。 (1番の方、お入り下さい。) 失礼します、という挨拶と共に、1番目の少年が入室した。 背は高く、ギターを抱えた手には、傷1つなく、顔はかなりの美男子だ。 (それでは、自己紹介をお願いします。) 少年は、にこりと微笑んだ。 (青山学院高等部2年、尾崎豊です。) (尾崎…!?) 彼が座っている椅子から、少し離れた席に座っていた、プロデューサーの須藤晃や、他の社員は、開いた口がふさがらなかった。この尾崎豊という少年は、昨日、オーディションを受ける予定だったのだ。 だが、約束の時間になっても姿を見せないので、社員達も、あきらめていたのだ。
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