少年 尾崎豊

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夜の閑静な住宅街にある、一軒家。ここが豊の家だ。 (ただいま。) おかえり、と、母と兄が出迎えた。 (オーディション、どうだった?) まあまあ、と答えると、兄の康は、参考書に視線を戻した。康は、豊より5歳上の大学4年生。一流大学に通っており、弁護士を目指している。 (今日は、豊の好きな、餃子よ~) 母の絹枝は、大皿に盛られた餃子を、ダイニングテーブルに置いた。 (母さん、身体は、大丈夫なの?) 絹枝は、病気がちだが、家一番の働き者だ。しかし、時々無理をして寝込むことがある。それが、豊の悩みの種になっていた。 (大丈夫。豊や康のことを考えたら、病気なんてふっ飛んじゃった。) いつもの笑顔で、母が笑う。豊も、つられて笑顔になった。 (豊。こっちへ来なさい。) 居間の入り口を見ると、父の健一が、厳しい顔をして立っていた。
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