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見上げる中島さんの横顔には、後悔の色が見える。
「彼女は、私に心配をかけさせまいと、内緒で治療をしていたんです。私が気づいた時には、もう、末期の状態でした。どうして、もっと、早く言ってくれなかったのか。そうしたら、自分にもできることがあったかもしれないのにって。そんなに、頼りなかったのだろうかって」
そんなことない。
「奥さんは、きっと、中島さんの悲しむ顔を見たくなかったんですよ」
とっさにそう答えていた。
私も、きっと、そうしていただろう。
カズの悲しむ顔を見るのは、とてもつらい。
「…あなたも、妻と、同じタイプなのかもしれませんね」
中島さんは、優しく笑いかけてくれる。
「…そうでしょうか」
「ええ。そう思います。だとしたら、あなたには、ちゃんと彼に甘えてほしいんです。不満があるなら、伝えてほしいんです。私のように、後で、後悔をさせないでほしいんです」
確かに、そうかもしれない。
「わかりました。私、ちゃんと、彼と向き合ってみます」
中島さんは、嬉しそうに微笑む。
「そうですか」
「だけど、中島さんにも、伝えたいことがあります。」
「はい?」
「私、中島さんの事が好きです」
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