喫茶店の紳士

4/15
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
仕事が終わった後、早速、CDショップで、「ロバート・グラスパー」のアルバムを購入。 聴くのを楽しみにしながら、カズの待つ、アパートへと帰る。 「ただいまー」 家に帰ると、先に帰っていたカズが夕食の準備をしていた。 「おかえり!今日は、パスタだよ!」 キッチンから顔を覗かせるカズ。 「パスタかぁー。何パスタ?」 「サバ!」 「サバ!?」 フライパンには、サバと玉ねぎが炒められたものがあった。 恐る恐る味見をする。 おそらくサバの下処理をしていないのだろう。 玉ねぎが、サバの生臭さを吸収していて、とんでもない味になっていた。 「…まずい」 「えー!?せっかく作ったのに!」 「気持ちは嬉しいけど、無理。私が作るから、テレビでも見てて」 カズはしゅんとして、リビングへ行ってしまった。 彼は、いい子なのだけれど、少し抜けているところがある。 だから、ほっとけなくて、ついつい世話を焼いてしまう。 まるで、お母さんのように。 「はい、出来ましたよー」 有り合わせのもので作った野菜スープと、キノコとシーチキンのパスタ。 「うまそー」 カズは、気持ちいいくらい、ぺろりと平らげてしまった。 そして、お腹いっぱいになって、眠くなったのか、そのままソファで眠ってしまう。 仕方ないなと、毛布をかけてやった。 そんな彼の寝顔を見ながら、ヘッドホンで、「ロバート・グラスパー」のアルバムを聴く。 哀愁があって、どこか甘美で。 こんな音楽を聴いている中島さんは、やっぱり、大人だ。 子供のようなカズの寝顔。 かわいいな、と思うこの気持ちは、母性というものじゃないんだろうか。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!