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仕事が終わった後、早速、CDショップで、「ロバート・グラスパー」のアルバムを購入。
聴くのを楽しみにしながら、カズの待つ、アパートへと帰る。
「ただいまー」
家に帰ると、先に帰っていたカズが夕食の準備をしていた。
「おかえり!今日は、パスタだよ!」
キッチンから顔を覗かせるカズ。
「パスタかぁー。何パスタ?」
「サバ!」
「サバ!?」
フライパンには、サバと玉ねぎが炒められたものがあった。
恐る恐る味見をする。
おそらくサバの下処理をしていないのだろう。
玉ねぎが、サバの生臭さを吸収していて、とんでもない味になっていた。
「…まずい」
「えー!?せっかく作ったのに!」
「気持ちは嬉しいけど、無理。私が作るから、テレビでも見てて」
カズはしゅんとして、リビングへ行ってしまった。
彼は、いい子なのだけれど、少し抜けているところがある。
だから、ほっとけなくて、ついつい世話を焼いてしまう。
まるで、お母さんのように。
「はい、出来ましたよー」
有り合わせのもので作った野菜スープと、キノコとシーチキンのパスタ。
「うまそー」
カズは、気持ちいいくらい、ぺろりと平らげてしまった。
そして、お腹いっぱいになって、眠くなったのか、そのままソファで眠ってしまう。
仕方ないなと、毛布をかけてやった。
そんな彼の寝顔を見ながら、ヘッドホンで、「ロバート・グラスパー」のアルバムを聴く。
哀愁があって、どこか甘美で。
こんな音楽を聴いている中島さんは、やっぱり、大人だ。
子供のようなカズの寝顔。
かわいいな、と思うこの気持ちは、母性というものじゃないんだろうか。
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