第1章

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 あれから一ヶ月ほどが経つ。あのとき住んでいた部屋には、もう住んでいない。 ユキナは仕事に出かけることもなくなって、毎日、毎時間一緒にいるようになった。それから、毎日「シンヤ」が家にいるようになった。朝、ユキナはシンヤを玄関まで見送ったあと、掃除を始める。 その間、ボクは棚の上に飾ってある白い服のユキナと、グレーの服のシンヤが映っている写真を眺めている。結局鎖は見つからなかったけど、今のユキナは、その写真の指にきらめくのと同じ銀色の輪っかを毎日はめるようになった。 その写真の二人はいつもより綺麗で、とても幸せそうで、大好きな写真なんだ。 「#$%?.&'""*?」 ユキナが何か話しかけてきた。やっぱりボクには何を言っているのかわからない。わからないけど、たぶんこう答えるのが正解なんだろうなと思って、 「うん」 と返した。
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