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自分は一体何者だろうか。そんな疑問を持ったことはあるだろうか。ボクは、ある。それは、つい一ヶ月半ほど前の出来事だった。
気がついたら布団に寝かされ、中年の男女と幼い子どもに見下ろされていた。ボクは彼らを知らない。ただ、目を開けたボクを見て、とても喜んでいるようだった。
「ここはどこですか?」
そう聞くと彼らは、
「#$%&*!§%$"!」
と何か言った。どうやら同じ言語を喋らないらしい。「あの・・・」と伝わらないとわかっていても、聞かずにはいられなかった。あなたたちは、誰なのかと。そしてボクは・・・ボクはあなたたちの何なのか。
思い出そうとしても、目を開ける前のことがさっぱり思い出せない。あれ?ボクって、なんで気を失ったんだっけ?ボクってなんて名前だっけ?まったく、思い出せないのだ。
しばらく混乱する頭で考えていたが、やがて目の前にホットミルクが運ばれてきた。
「これ、ボクに?」
そう聞くと、またわけのわからない言葉で返ってきた。
「あの、あなたたちは・・・」
「"$+@>%」
ボクが喋る度にいちいち何か喋ったり手を叩いたりして、反応をしてくれる。その時の表情は温かく笑っていて、言葉が通じないながらも歓迎してくれていることがわかった。
それまでどのように生活していたのかちっとも思い出せないボクはどうしていいかもわからず、自然とその人たちと一緒に暮らすようになった。彼らもそのつもりだったようで、自然とボクを置いてくれていた。
中年の女はボクにご飯を用意してくれて、中年の男はぬいぐるみなんかを買ってきてくれた。子どもと一緒に寝るのが日課になった。
ある日、帰ってきた子どもを玄関まで迎えに行くと、子どもはボクの脇をすっと通り抜けていった。いつも、何か言いながら抱きしめてくれるのに。ボクは子どもの後を追った。子どもの部屋の扉が、少し開いている。
「入るよ」
ボクが声をかけると、子どもはボクの方を向いた──その頬は、涙で濡れていた。ボクは子どもに近づき、涙を拭う。
「?@%)@=&*・・・」
何かわからないけど、きっと悲しいことがあったんだね。ボクには君の言葉はわからないけど、涙を拭うことしかできないけど──その瞬間、ボクの身体は抱きしめられた。
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