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タバコの灰が落ちた
コーヒーがこぼれた
世界が終わった
どれも似たようなものなんだと、ここで学んだ。
今までたくさんの事件の犯人を見つけた。捉えた。そして、新聞に載ったりして名も少し売れて。
舞い上がって、失敗して、やり直して。地道な努力はそれなりに評価してもらえる。
今日はタバコの灰が落ちた。
俺の世界はまだ終わらないようだ。
犯人を捕まえれば、俺は報酬を得る。犯人はどうだろう。何かを失うだろう。自由とか?
うまい喩えにならなかったけど、等価交換なんてできてない時の方が多いなって。
タバコの灰が落ちたから、今日も世界は終わらないんだ。明日はコーヒーがこぼれるかもしれないし、世界が終わるかも。
事件が起こるのは嘆かわしいことだ。起きない方がいい。でも、事件が起きなかったら俺はどうやって生きていけばいいんだろう。生きていけるのだろうか。あぁ、嘆かわしいことだ。
「ちょっと!草丈さん!またそこでぼーっとしてないでくださいよ。外から見える席なんですから。」
「じゃあなんだ。どうしたらいいんだ。」
「せめて...ほら!新聞読むとか、本読むとか、ポーズだけでもするといいかも。あなたぼーっとするとき外見るでしょ?歩行者の皆さんが草丈さんを注目してなんか迷惑になってます!!」
「物が増えると確率が変わる。」
「いつもそれ言いますけど、世界はそんなに簡単に終わりません!」
「じゃあ席移るよ。それでいいだろ?」
「いや...あなた目当ての客がいると店が潤うというか..いつでもご新規様募集中ですから!」
「うーん、なるべく外を見ないようにする。それでいいかい?」
「お願いします。」
「じゃ、コーヒーのおかわりを頼むよ。」
「かしこまりました。」
コーヒーはこぼれなかった。
タバコの灰は落ちなかった。
世界はおわらなかった。
事件はまだ起こらない。
やはり世界が終わるのは角砂糖が溶け残った時か。
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