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「すまないが大きな声を出さないでほしい。話は聞いている。私は今、数人の兵と共にこの町に滞在させてもらっているのだ。そこでだ。格闘家が苦戦するモンスターを我々がサポートして倒す。これなら格闘家のメンツも潰れまい。この町では格闘家は英雄だと言う。彼らにモンスターの親玉を討伐してもらおうと思うのだが、町民としての意見はどうか?」
2人組は顔を見合せ、意を決したかのようにジェラールに話す。
「陛下、お願いします!この町は格闘家に守ってもらってますが、奴らは頼りになりません!モンスターを倒して下さい!」
町民としても近場のモンスターの驚異は大きいようだ。
彼らの顔にも切実さが浮かんでいる。
「…そうか。分かった。酒の席にすまなかったな。それでは失礼する。」
ジェラールは2人組の座るテーブルを離れ、ベア達の元に戻った。
「ジェラール様。正体バラしちまったんですか?」
「ああ、しかし、あの2人の様子では帝国に援軍要請などご法度のようだ。自分達が帝国の皇帝にモンスター討伐を依頼したとは言いにくいだろう。我々の情報が広まるまでにはもうしばらくかかる。その間に格闘家に接触するのだ。」
ベアはとても酔っ払いとは思えない表情でジェラールの話を聞いている。
「なるほど…では明日の朝にでも龍の穴に出向いてモンスター討伐の段取りといきますか。」
「そう思っている。この周辺の大体の状況は掴めてきたようだな。ベア、ジェイムズ、情報収集ご苦労だった。…それと、ヘクター…は聞こえぬだろうな。」
ベアとジェイムズはジェラールの他愛ない冗談にひと笑いした後、酒瓶に手を伸ばした。
「さて、私も飲むか!町の酒場での酒盛というのを今回の楽しみにしてきたのだ。お前達も存分に楽しんでくれ。」
その後、少し遅れてテレーズが到着。
酔っ払ったベアと動かないヘクターを見て顔をひきつらせたが、席に着くと彼女も酒を飲み始めた。
こうして小さなテーブルを囲んで、みんなで肩を並べて飲む安酒は、宮殿で1人、広い部屋で飲む高級酒よりも、はるかに美味であった。
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