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翌日。
格闘家に接触するため、ジェラール達は朝早く宿を立つ事にした。
ベア達は、龍の穴への出立準備を整え、一足早く町の入り口にて待機している手筈になっている。
「いってらっしゃいませ。是非ともまた御贔屓に。」
朝早いにも関わらず見送ってくれたのはマーニャだった。
「ああ、世話になったな。」
マーニャはジェラールを少し寂しそうな目で見つめている。
彼女はジェラールに小走りで駆け寄ると外套をつかむ。
「ジェラールさん…また…会える…?」
不安そうな顔でマーニャはジェラールを見つめる。
「ああ、またこの町に来た時は必ず立ち寄ろう。」
マーニャはジェラールの言葉に納得しない。
未だ不安を湛えた表情でジェラールを見つめている。
しかし、やがて諦めたようにうつむいた。
「ジェラールさん。これ…」
マーニャがジェラールにそっと手渡したのは、小さなお守りだった。
「昨日の夜に作ったの。あの…良ければ持っていって。モンスターを倒しに行くんでしょう?」
お守りの形は少々いびつだったが、手作りらしく温かみの溢れるものだった。
「ありがとう。マーニャ。大切にするよ。これがあればモンスターなど恐れるに足らぬだろう。」
マーニャは優しく微笑んだ。
「…うれしい。」
元気な町娘マーニャ。
彼女が見せたその儚げな笑顔と健気な思いは、ジェラールにはとても尊いものに思えた。
「それではな、マーニャ。また会おう。」
「うん。いってらっしゃい。ジェラールさん!」
ジェラールがマーニャに背を向け歩き始めると、マーニャは彼の背中に向かって手を振った。
ジェラールが朝靄の町に紛れて見えなくなるまで、彼女は手を振り続けた。
「さあ、今日も1日がんばるぞ!」
マーニャは小さく拳を作り意気込むと、宿屋へと戻っていった。
今日もマーニャの元気な声が響き渡り、明るいニーベルの1日が始まる。
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