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しばらく歩くと大きな岩山にぽっかりと口を開けた洞窟へと辿り着いた。
洞窟の形はまるで龍の頭のように見え、船をも飲まんと開かれた口の部分が入口になっている。
周りには修行中の格闘家が何人もおり、わらで編まれた練習用の人形に向けて技を繰り出している。
「カール様はこの中の一番奥の部屋におります。案内いたしますので足元にお気をつけください。」
「気遣い痛み入る。」
ジェラールは男に案内されるまま洞窟に足を踏み入れた。
洞窟内はひんやりとしており、入り口付近は長い階段が地下へと続いていた。
最深部まで降りると、そこにはまたも修行場があり、多くの格闘家達が稽古にはげんでいた。
「これはすごい数だな。それに手練ればかりと見受ける。アバロンの兵舎にも引けを取らないだろう。」
ジェラールは地方の南バレンヌにこれほどの施設と兵力が揃っている事に素直に感心した。
「ご謙遜を。さすがの我らも天下のアバロン帝国には敵いますまい。さあ、ここがカール様のお部屋です。」
男は立派な扉の前で立ち止まり、軽くノックした。
「カール様!皇帝陛下がお見えになりました!」
すると扉の向こうから声がする。
「分かった。お通ししろ。」
扉が開かれる。中には大きなテーブルが設えてあり、その向こうに仮面を着けた男が座っていた。
「お初にお目にかかります陛下。私が格闘家の頭目、カールと申します。」
カールは立ち上がるとジェラールの元まで歩み寄り、握手を求めた。
先程の付き人よりさらに体格が良く、纏うオーラも覇気に満ちている。
「私はアバロン帝国皇帝、ジェラールだ。」
ジェラールも握手に応じる。
「今日は話があってお目通り願った。突然で申し訳ない。」
「とんでもございません。ところで、お話とは?」
カールはジェラールを部屋のイスに誘導しながら話す。
「ニーベル付近のモンスターの巣についてだ。カール殿も頭を悩ませていると聞いた。」
するとカールは大きな2つの拳を自分の胸の前で強くぶつける。
「モンスターは必ず我々が叩き潰す!」
その意気込みたるや、彼らがニーベルの人々の期待に応えようとしている様がひしひしと伝わってきた。
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