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「陛下、アレがゼラチナスマター。我々が苦戦しているモンスターです。」
カールが指差す方向を見ると、暗がりの中から巨大な軟体生物が現れた。
体は透明で、ゼリーのようにブヨブヨしており、透明な体から透けて見える内臓はドクンドクンと生々しく動いている。
「いやぁぁぁ!!気持ち悪い!」
そのあまりの異様さにテレーズが叫び声をあげた。
無理もないだろう。その姿はモンスターというには少々常軌を逸している。
「こんなモンスターがこんな所に…!出入口より大きいぞ!一体どうやって…」
モンスターを見て驚くジェラールにカールは、その生態の予想を話した。
「おそらくは元々小さな無機質モンスターだったのでしょう。この洞窟の湿気や染水を吸って巨大化したようです。床を見てください。」
カールが床をを指差す。
ジェラールがそこに目を落とすと、大量の小動物の骨が散乱していた。
「察するに迷いこんだネズミなどの小動物を取り込んで熔解し、補食しているのでしょう。この大きさではそのうち人も襲いかねません。」
どうやら事態はかなり深刻だったようだ。
早急に倒さねばならない。
「見ての通り奴をいくら拳で殴っても柔らかくてダメージを与えられません。陛下、お願いします。」
「よし、やってみる。」
ジェラールはゼラチナスマターの前まで進み剣を構えた。
それに気付いたのかゼラチナスマターはゆっくりとジェラールに這い寄る。
「拳が効かぬなら剣はどうだ!」
ジェラールは柄を強く握り、打ち据えるように切りつけた。
ゼラチナスマターの表面の膜に傷ができる。
しかし、本体は全く動じない。
「ダメだ。皮膚は傷付けられてもダメージは薄い。しかもこの大きさでは削り倒すにも…」
その時、ゼラチナスマターの体が発光し始めた。
「なんだ!」
「陛下!危ない!電撃がくる!」
カールは慌てて叫んだ。
ゼラチナスマターは体内に電気を溜め込む器官を持ち、体の有り余る水分を用いてそれを打ち出す事ができるのだ。
「ジェラール様!」
ベアは大急ぎで駆けてきてジェラールの前に立ちはだかると、盾を構えて強く床を踏みしめた。
ゼラチナスマターの発光が一転に集中し、前方から直線的に電撃が放たれる。
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