第2章 ザ・ドラゴン

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格闘家の後を追って洞窟の奥へと進むジェラール。 すでに周囲のモンスターは彼らによって駆逐され、道中モンスターを目にする事はなかった。 ジェラールは洞窟の最深部へと辿り着く。 そこにはモンスターのボスと対峙するカールの姿があった。 ボスモンスターはどす黒い体と体毛に覆われ、鋭い牙と爪、湾曲した角を持つ悪魔のようなモンスターだった。 闇色の障気を放ち、不気味に笑っている。 体格はベアやカールの倍はあろうか。 「こいつは…彼らだけで倒せるだろうか。しかしここで手出しはならん。カール殿の戦いを見届けよう。」 ジェラールは少し離れた場所から見守る事にした。 「やっと会えたな。嬉しく思うぞ。」 カールが全身の気を練り上げ、覇気を纏いながらモンスターを威嚇する。 モンスターもそれに負けず咆哮をあげて、巨体を活かした力任せの攻撃でカールに襲いかかった。 「ガルァァ!」 大木のような太い腕が槍のように鋭い爪と共にカールに向かって降り下ろされた。 轟音が響き、地面がえぐれる。 「カール殿!」 ジェラールは一瞬、カールがモンスターの一撃を受けたかに見えたが、それは残像だった。 「遅いぞ!」 モンスターの攻撃を先読みし、一瞬早く跳躍していたカールは、攻撃で体勢を崩したモンスターの顔面めがけて空中から強烈な回し蹴りを放った。 「ソバット!」 スキだらけの状態でカールの渾身の一撃を受けたモンスターは、激しく顔面を変形させ苦悶の表情を浮かべる。 すると吹き飛ぶ間も与えず、素早く体勢を戻したカールは、着地を待たずに深く引いた拳を回転させながらモンスターの脇腹に叩き込んだ。 「コークスクリュー!」 モンスターの体がくの字に折れ曲がり、今度こそ吹き飛んだ。 数メートルは飛ばされたであろうモンスターは激しく地面に叩き付けられ、もがいている。 カールは着地すると、すぐに呼吸を整え、ゆらりと迎撃の構えをとる。 モンスターの初撃からここまで数秒。 とんでもない高速戦闘だった。 「…!なんという強さだ…」 ジェラールはニーベルの町民が英雄と讃える格闘家の実力をその目で目撃したのだった。
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