第2章 ザ・ドラゴン

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「グボォ!グルル…」 モンスターは苦しみながら体をもたげた。 相当なダメージだったのだろう。フラフラとして身を傾けている。 しかし、またも巨体を武器にカールに襲い掛かった。 今度は牙による攻撃でカールを噛み砕こうとしている。 「ここまで触れられもせぬ相手にまた同じ戦法か。学習能力の無い奴よ!」 モンスターの牙が届く、その一瞬前、カールの姿が消えた。 と思うと、カールはすぐさまモンスターの背後に姿を表す。 そしてモンスターの頭上で右足を大きく振り上げている。 「ジョルトカウンター!」 またも攻撃で体勢を崩したモンスターの背後から渾身の延髄切りをあびせた。 「ガフッ!」 モンスターは声もろくに出せぬまま前方へ数メートル蹴り飛ばされ、顔面から地面に落下した。 「グルル…ゴアァァ!!」 モンスターはふらつきながらカールに向かって捨て身の特攻を仕掛ける。 全身を使い、カールにのしかかるように飛び掛かった。 「体をさらけ出して的を広げるとは…愚策にも程があるぞ!」 カールは腰を深く落とし、両足で力強く地面を踏みしめると、両腕を引き付け、そこからまるでカタパルトからでも放たれたかのような猛烈な拳を連続で打ち出した。 「マシンガンジャブ!」 もうその拳を目で捉えるのは不可能だった。 それは連続した拳というより、拳の弾幕、もしくは拳の壁と言った方が正しい表現かもしれない。 空中からのしかかり攻撃を仕掛けてきたモンスターに逃げ場はなく、カールの拳をまともにその全身に浴びた。 ズドンッ! 衝撃音は一瞬。それは無数に放たれた拳が、ほぼ同時にモンスターに打ち込まれた事を意味する。 「ブハッ!ガアァァァ!」 モンスターの体は一瞬にしてボコボコに変形し、腕や足はまるでマッチ棒のように叩き折れた。 その光景は、カールの拳が手数だけの軽いものではなく、ひとつひとつが鍛え抜かれた一撃必倒の威力を持っている事を物語る。 「ア゙…ガへェ…」 モンスターの目から光が消える。 見るも無惨に変わり果てたモンスターは、まるでボロ切れのように力なく地面に落下し、消滅した。 カールは一礼すると構えを解き、武道着の襟を直す。 周囲の壁にはカールが放った拳の拳圧により、無数の窪みができていた。
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