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「皇帝陛下。ありがとうございます。これでメンツが保てた。これからは帝国に協力しましょう。」
「分かった、カール殿。それでは引き続きニーベル、ひいては南バレンヌの守りとして共に戦ってほしい。」
ジェラールはカールの同盟要請を受諾した。
今回の件は帝国にとっても格闘家にとっても、お互いに有益な同盟相手であると確認するに充分なものであった。
「カール殿など畏まらないでください、陛下。これからは家臣同様、カールとお呼びください。」
「分かった。カール、よろしく頼むぞ!」
「はい、陛下。体術なら私がプロです。戦士が必要な時はいつでもお呼びください。」
ジェラールとカールは固く握手を交わす。
帝国と格闘家の間に強い信頼関係が生まれた。
「ところでカール。見事な戦いぶりだったな。私は体術の心得がないので、素人考えでは拳が武器に勝るとは思ってもみなかった。」
カールはコクリと頷く。
「鍛え抜かれた拳は下手な武器など軽く凌駕する威力を持ちます。先程のような体が大きいだけのノロマなど我々の相手ではありません。しかし拳は拳。いかに威力はあっても、陛下の剣術のように多数のモンスターを相手にする事は苦手ですし、ゼラチナスマターのように柔らかいものには無力です。一長一短ですな。」
なるほど、カールの言う事はよくわかる。彼が最も言いたいのは、お互いの長所を頼り、短所を補おうということだろう。
この度の同盟もその意があっての事。持ちつ持たれつというわけだ。
「それに恐ろしいのは知恵のある相手です。先程のモンスターのような突進してくるしか能のない者なら恐るるに足りませんが…陛下、運河要塞をご存知ですか?」
「ああ、当初の目的としては運河要塞の視察という部分も大きかった。聞けばヴィクトール運河の交通権を牛耳っているようだが…」
カールは無言で頷く。そして少し不安が入り交じる様子で話を始めた。
「その通りです。奴らは商船から多額の交通費を巻き上げ、その財力で力をつけています。やがてはこの地方を支配するつもりでしょう。ここのモンスター掃討は我々の目下の目的でしたが、運河要塞をどうにかせねば南バレンヌの平和も無いでしょう。」
ジェラールが当初欲しがっていた運河要塞の情報だ。ニーベルでは手に入らなかったが、ここに来てようやくそれについて詳しく聞けそうだ。
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